|
++++++++++++++グラフ+++++++++++
……どこまでも一人きり……
バーツ…もう会えない。
いつも「愛している」と囁いてくれた心地いいテノールも、
抱きしめてくれた体から伝わる心臓の鼓動も、もう…聞こえない……
人は一人では生きていけない。
だから共に歩もう、と。
死ぬときは一緒だと、暖かな口付けと共に交わされた誓約。
なのに誓いは破れた。
目の前に横たわる彼の表情は穏やかで……
胸に開いた穴と、冷たい体に気づかなければ、眠っているようだった。
ああ……そうだ。
彼は約束を違えない。
俺を殺せるのはお前だけ。お前を殺すことが出来るのも俺だけなのだと、
誓いを立てたとき彼は笑ったのだから。
これは悪い夢。
夢から覚めれば、また太陽のようなまぶしい笑顔を浮かべて俺を抱きしめてくれる。
「勝手に殺すな」と優しく甘い声で俺を叱ってくれる。
早くこの夢から目覚めなければ……
夢から覚める方法を探してあたりを見回す。
彼の愛用していた剣を持ち、切っ先を胸に当てた。
これでこの夢から覚める。
次に目を開けたとき、バーツの暖かな鼓動を感じることが出来る。
冷たい感触が全身を支配し、ゆっくりと目を閉じた……。
|
***************バクチ***************
……キャプテンが死んだ……
クロウバードと合同でファルコンの宝を追い求めているときに、
敵の化獣の閃光に貫かれて。
いつものキャプテンなら そんな閃光もものともせずに避けただろう。
だけどあの時、彼は傷ついたキャプテングラフを庇って閃光を受けた。
彼を護るために、その身を犠牲にした。
ファルコンを追う夢を途中で断たれてしまったというのに、
死に顔はとても穏やかだった。
いつだったか、彼に聞いたことがあった。
恋人を置いて逝くようなことになったらどうするのか、と。
彼を誰かに託すのか、と。
だが彼は笑って取り合わなかった。
自分が死ぬときは一人では死なない。
一人で生きて行くことの出来ない恋人を置いて死ぬぐらいなら、一緒に連れて行く。
他の誰にも譲る気はないと言った。
彼は、俺のグラフに向けた想いを知っていたのだろうか?
しかし、誰にも渡さないと豪語していたキャプテンはもういない。
一緒に連れていくと言ったはずの恋人を一人残して逝ってしまった。
キャプテンの死を知って後、グラフは心を病んだ。
キャプテンの後を追おうと自殺しかけ、副長たちに止められたらしい。
今では全く微笑むことなく、キャプテンの名を呼びつづけているという。
キャプテンはいつかの言葉通り、彼の心を一緒に連れていってしまっていた。
俺の力で笑顔を取り戻してやりたくて、キャプテンを忘れさせてやりたくて……
抜け殻のようになったグラフを抱きしめてそっと口付けた。
「バーツ……?」
彼は俺の中にキャプテンの影を見つけた。
俺だけに向けられた、初めての言葉、初めての笑顔。
その笑顔も、言葉も……甘く誘う行動すらすべてが俺でなく、
俺の中にあるキャプテンに向けられたもの。
彼がみているのは俺ではないと分かっていても、その瞳から逃れられなくなった。
たとえキャプテンのかわりだろうと……俺は彼を手放すことができない……。
彼は狂気の中で幸せな夢を、俺は狂うことさえ許されない日々の中、
抜けられない夢を永遠に見つづける………。
|
 |
ハッキリ言って暗いです。おまけに短いし。
最初、バーツの後を追うグラフがどうしても書きたくて
書いてみたのですが異常に短くなってしまいました(汗)
その後、「バクチが慰めるのもいいな〜」とバクチバージョン
を書いてみたらこちらも短すぎて・・・。
一本ずつ独立させるにはあまりにも・・・なので、合体(苦笑)
そのうち全体を書き直したいと思っていますが、
果たして出来るだろうか……(悩
|
 |