あの日、目覚めると親父がいなかった。
 いつもはベッドの横にいて、俺が起きると「おはよう」と声をかけながら、ベッドから抱き下ろしてくれる。
 だがあの日、ベッドの横に親父の姿は無く、代りにあったのは船長服と首飾り。
 何か嫌な予感がして、部屋を飛び出した俺を迎えたのは、母の、いつもと変らない笑顔。
「母さん、父さんは? どこに行ったの?」
 そう質問した俺に、母がちょっと困った顔で告げた行き先は、『海賊の墓場』。
 ガキだった俺は、その名前の持つ意味をはっきりとは理解していなかった。だが、親父がもう二度と側にいてくれないのだと思い、泣き出してしまった。
 母はそんな俺の前に屈み込んで、ゆっくりと言った。
「よく聞きなさい。父さんは、誰一人として戻ったことのない場所へ行ったけれど、必ず戻ってくるって仰ったわ。
明日か、一年後か、いつになるかは解らない。でも、誰も見たこともないようなお土産を持って、きっと帰ってくるわ。
父さんが嘘をついたことはないでしょう?」
「でも、母さんは寂しくないの? いつ帰ってくるか解らないんだよ?」
「どうして? 母さんの側には、あなたがいるもの。父さんの方が寂しいわよ? 大好きなあなたに暫く会えないのだから」
 そう言いながらも、少し寂しげに微笑んだ母。その時、寂しいのは俺だけではないことを知った。
 
 以来、母とアーバランを守るのは、俺の役目になった。
 あれから何年もの月日が流れた。親父は未だに戻らない。けれど、俺達は今でも待っている。
 必ず戻ると言った言葉を信じて―――




Fin

バグラの「F・I」と同じ頃に書いたモノです。
今もへたくそですが、
それに輪を掛けてヘたれでお恥ずかしい(汗)
パパグラを書こうとしたはずなのに
ママになってしまった謎の一品(苦笑)

タイトルは杏樹さんが付けてくださいました♪