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にいちゃん、とーちゃとかぁちゃは? どこにもいない」
「2人とも死んじゃったよ」
「しんだ・・・?」
「死んだんだ。もう、俺達2人ッきりだ……。だから、これからは俺がお前を守ってやる」
俺の持っている、一番古い記憶。
3つの時に親は死んだ。
あの時、抱き締めてくれた兄の身体は震えていた。
たった一人の血の繋がった兄。ラグ……。
いつこの想いに気づいたのだろう。
気がつけば、目が追っていた。
いつだって、一番愛していた。
いつのまにか兄としてではなく一人の男としてみていた。
やがて血の繋がりを恨めしく思い始めた。
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父と母がいなくなったとき、俺に残されたのはたった一つ。2つ違いの弟。
俺の背中を追ってくるその姿が可愛らしく、
この小さな手を守りたくて何でもやってきた。
「いいか、俺達はたった2人だ。だから、兄とか弟とかはもう関係ない。
これからは俺のことをラグって呼ぶんだぞ」
「ラグ……?」
「そう、ラグだ」
それは、2人で生きていく為の呪文。
弟ではなく、一人の人間として見るための言葉。
それが間違いだった。 |
「あたしはラグが好き」
レイラがラグに想いを寄せてるのを知って以来、
俺はレイラを好きなそぶりをし続けた。
レイラの想いに応えるラグなど見たくなかったから。
俺だけのラグでいて欲しかったから。
ラグにとって、俺は都合のいい弟でしか無いことは十分すぎるほど分かっている。
だからこれは悟られてはいけない想い。
一生自分の中に秘めなければ……。
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知られてはいけない。夜毎、弟を抱く夢を見ていることなど。
このまま共に過ごせば、いつか押さえが利かなくなる。
誰よりも守りたい人をこの手で壊してしまうだろう。
だから船を下りた。お互いにとって最良と思える道の為に。
今、レイラの気持ちはジョンよりも俺に向いている。
だが自分がいなくなれば……
レイラは側にいるジョンを見るようになるだろう。
そうすれば全ては丸く収まる。
自分一人が我慢すれば……。
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レイラとの結婚が決まったとき、ラグは俺の顔を見なかった。
きっと彼にとって、俺の結婚は取るに足りないことなのだろう。
それでも構わなかった。俺はレイラからラグを守れたことに満足だったのだから。
だが、あの日。ラグに頼まれ物を届けに行った、あの日。
一番見たくないものを見た。
ラグにと共にベッドにいるレイラ。
そのとき、レイラに勝ったと思っていたのは
俺の勘違いだったのだと知った……。 |
「レイラと結婚するんだ」
そう報告されたとき‥‥自らが望んでいた結果だったにも拘わらず、
嫉妬で体中の血が沸騰しそうになった。
幸せそうな顔を見れば、今まで押さえてきた感情が爆発してしまいそうだった。
ジョンの顔を見ないことで、漸く平静を装えた。
‥‥俺が望んでいたのは、ジョンを何よりも大事に思う伴侶。
しかし、レイラは海賊として生きることを一番に考えていた。
ジョンを一番に思わない奴になど、渡せない、渡す気もない。
だから‥‥ジョンを裏切った。
たとえ恨まれようとも、レイラにジョンは渡せなかったから。
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ラグの消息は分からない。
死体は上がらなかった。
そのことに一縷の望みを託そう。
あんたはどこかで生きているのだと……。
ファルコンを追っていればいつかは出会えると信じていたい。
そして出会えたなら、今度こそ自分の気持ちに正直になろう。
2度と後悔しないために。
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今度出会ったとき、お前の側には誰がいるのだろう。
伴侶を選ぶのを邪魔する権利など俺には無いのだから。
もしこの先お前と再会出来たとき、傍らに誰もいなかったら‥…
この想いを伝えよう。
俺はお前を愛していると。
弟としてではなく、一人の人間として、心から愛していると……。
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了
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親方ことマサムネさまへ捧げた一品。
高知ミニオフ会にて「ラグジョンを書きます〜」
と約束したのが始まりだったと・・・
ラグジョンを書くつもりが何故かローバーに(汗)
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