孤高の海賊モーニングスター。
そのたった一人のクルー、モーニンググローリー。
ある日そんな彼の前に近海随一と言われる海賊船が現れた。
「私の右腕となれ」
彼を数十の剣先が取り囲み、どこまでも尊大に男が言った。
「断る」
返事は簡潔であった。間髪入れず返された言葉に周囲を固めた下っ端達の切っ先がわずかに動いたが、断られた男の表情は変わらない。
「何故だ?」
「他人と連んだってつまんねェからだ。俺より面白いヤツが相手なら考えてやってもいいけどな」
「面白いものを求めるか。ならばなおさら余の元へ参るがよい」
「あ゛?」
「『隣の家に囲いができたってね。』『へー。』」
男はこれ以上ないほどのドヤ顔で涼しげに言い放った。
「………」
「どうだ?余の元へ来れば、このような面白い小咄を毎日聞かせてやろうではないか」
自分のネタが面白いと信じて疑ってないその目はどこまでもマジだった。
自分が求めている面白いことの意味が違うし、そもそもそれ面白くも何ともないから!
とツッコミを入れたいのは山々ではあるが、自信満々、迷いのない瞳で見つめられてしまい、さすがのグローリーも否定の言葉を口に出来なかった。
「あ〜〜、うん。そうだな…」
「さあ、来るがよい」
男が右手を伸ばし、グローリーへと歩み寄る。
「ちょ、ちょっと待った」
「お前の望みの物は我が船にあるというのに、これ以上何を躊躇うことがある?」
「俺の船に大事な物置き忘れてるんだ。取りに行かせてくれ」
「それならば部下に行かせればよかろう。その物の置き場をいうがよい」
「いや、ちょっと説明しても分からないところにおいてあるんだ。すぐ戻ってくるから」
「ならば5分だけ時間をやろう」
…
……
「遅いですな…」
「バグロス様!グローリーが逃げました!!」
「ヤツめ!バグロス様の笑いが高尚すぎて理解出来ず、それを恥じて逃げ出したな!?」
「ならば仕方ない。この次までに笑いのレベルを落としておかねばならぬな。…難しいことだが」
「御意」
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