クロウバード号船長室。
フルーティーズに起こされたキャプテンであるグラフの一日は、枕元に飾ってあるジョンバーツの写真(隠し撮り)にキスをするところから始まる。
「おっはよ、バーツ。今日も変わらずいい男だな♪」(チュッ)
写真に写ったバーツが毎日変化していたら、それはホラーだろう・・・。
「ほっとけ!」
ごめん。
「キャプテン・・誰かいるんですか?」
いきなり天井に向かって怒鳴ったグラフをみて、ストロベリーが青ざめた。
「あ、イヤイヤ、こっちの話。さ〜て!今日も一日頑張るか!!」
大きくのびをして服を着替え、執務室へと足を運ぶ。
そこには部屋中、バーツの写真。プリクラサイズから全判まで、あらゆる大きさの隠し撮り写真が所狭しと飾られていた。そして、壁の一角には港に寄る度に集めた巨乳パイ拓が飾られていた。
もともとスパードとカマラをバーツから遠ざけるために取ったパイ拓であったが、今ではすっかりグラフの趣味となっていた。
スパードとカマラのパイ拓をとったといえども、世の中には何百人と巨乳がいる。巨乳好きのバーツから全ての女を遠ざける為にもグラフは海賊行為すらほったらかし、なじみの情報屋を使って各港の巨乳リストを作り続けてきたのだった。
「ピーチ、ココから一番近い港って何処ォ?」
さらなるコレクションを増やすため、子供の様に小首を傾げて副長に問いかけた。
まがりなりにもキャプテンなのだから、現在地ぐらい把握しとけ!
と突っ込む事の出来るクルーなど居やしない。
み〜んなグラフの天然にノックアウトされて乗り込んでいるのだから。
ピーチはザカザカと海図を広げ、航路をチェックする。
「キャプテン、一番近くじゃないですが・・ちょっと離れた港にスイートマドンナがいるらしいっすよ」
「ぬぁにぃ! ピーチ、ストロベリー! バーツに会いに行くぞ!!」
巨乳娘達のコトは一時頭から追い出して、グラフは愛しのバーツに会うために、クロウバード号の進路をスイートマドンナ号のいる港へと向けた。
一方そのころのバーツと言うと・・・・
「乳〜〜〜〜〜!!!!!!!」
人目も憚らずに絶叫し、やけ酒をかっくらっていた。
「ねえ、バーツはどうしたの?」
「ほら、最近巨乳の女の人が近寄ってくれないから、荒れてるんだよ」
「あ。そう言えば、巨乳ハンターって人がいるみたいだもんね〜」
「警察は掴まえないんですか?」
「どうもかなりのテクニシャンらしくてさ、被害者も半分喜んでいるらしいからな〜」
「それにキャプテン以外は迷惑していないようじゃからのォ・・・」
着実にグラフの努力は実を結んでいるようだった。
そこへ、
「よォ、バーツ!」
酒場の扉を押し開け、フルーティズを従えたグラフが満面の笑みを浮かべて入って来た。
「んぁっ・・・?おう、グラフ・・・」
酒瓶片手にテーブルに突っ伏したバーツは、グラフの方をチロリと見て気のない返事をする。
「んだよォ。折角、人が会いに来てやったって言うのに・・」
「あ〜〜?なんの用だ・・・?」
「ファルコンの手がかり見つけたからよォ、お前にも見せてやろうと思ってな♪」
「ホントかよ!?」
ファルコンと聞いて、途端にバーツの表情が変わった。
「ホントだって。俺の船に置いてあるからよォ♪」
「おう!んじゃ今から行こォぜ」
嘘八百もいいところである。ここのところ宝さがしをサボっているグラフがファルコンの手がかりを掴んでいるはずはない。
なんとかバーツの気を引こうと言うグラフの健気な乙女心(?)であった。
バーツ達はクロウバード号へと向かうべく、酒場を後にする。
「ちょっとまったぁ〜〜〜〜!!」
ぶあっさ〜〜〜!と太陽をバックにコウモリの羽根の形に切り取ったマントを翻し、怪しさ大爆発の覆面巨乳女が空から降ってきてバーツ達の行く手を塞いだ。
彼女のコスチュームは乳を強調させた黒いレオタードに怪盗ゾロ風のマスク。腕に沿ってコウモリの形のマントが張り付き、平井堅のような髪型をした頭の左右にもコウモリの羽根をかたどった物がひっついている。
「輝く巨乳は正義の印。黄金バスト、推参!」
「おお!!」
いきなり目の前に降ってきた謎の巨乳に、バーツが両目をハートマークにして飛び出させた。その様は、まさにアメリカンコミック。トムとジェリーの世界。
バスト90は軽く越えているであろう巨乳に釘付けとなってしまったバーツ以外のメンバーは、その異様なコスチュームに度肝を抜かれ、一人残らずあんぐりと口を開けている。
「なにやってんだ、オルカ。デビルマンのコスプレか?」
ギクッ・・・・
「な、何を言うんだ!私はオルカなどという者ではないし、ましてやデビルマンでもない!!!!」
開ききった口を一旦閉じ、ようよう言葉を発したのはバクチだった。
確かにそのコスチュームは、一見するとデビルウイングを出した状態のデビルマン(原作バージョン)とも言えなくもない。
いきなり自らの正体を見破られてしまい、冷や汗をダラダラ流しながらも懸命に否定する黄金バスト。
「そうだゾ、バクチ。失礼なことを言うな。ここにいるのは立派な乳だけだ」
「キャプテン、こいつはオルカですってば」
「オルカではないと言っとるだろォがっ!! 私は巨乳ハンターを倒し、バーツにこの巨乳を与えるために来た展よりの支社、黄金バストだ!」
「お前、変換思いっきり間違ってるゾ・・」
「聞き捨てならねェな。巨乳ハンターをどうするって?」
呆れ返り言葉を失ったバクチに代わって、グラフがうっそりと会話に割り込んだ。
「聞こえなかったのか?私が巨乳ハンターを倒すと言ったんだ。まあ、お前みたいな盆地胸には関係ないことだけどな」
グッサリ。
グラフの胸に特大の銛が突き刺さる。
「ぼ、盆地胸言うなっ!」
「盆地胸だから盆地胸だって言うンだ。悔しかったら、これぐらい乳を育ててみろっ!」
黄金バストはどぷぷり〜〜〜んという効果音が相応しいほどに乳を揺らし、これ見よがしにグラフに見せつけた。
「あ、悪ィ、グラフ。お宝はまた今度戴きに行くからよ。んじゃ、乳のでかいおねーさん、俺の船へ行こォぜ♪」
「ええ、喜んで♪」
バーツはグラフに向かって手を振りながら、黄金バストに腕を差し出した。
黄金バストは勝ち誇った笑みを浮かべて差し出された腕に自分の腕を絡ませる。
そして2人は腕を組み、仲良く去っていった
「・・・・・ガッデム!」
折角のバーツとの逢瀬を邪魔され、一人取り残されたグラフ。
悔し涙を流しながら、全身に炎を纏う。
「お〜燃えとる、燃えとる」
「キャプテン、ほら。お芋が焼けましたよ♪」
副長2人は宥めもせずにグラフの炎で芋を焼いていた。
バーツと黄金バストはイチャイチャしながらスイートマドンナ号へと向かっていた。
もっとも、バーツの発した言葉は
「イヤ〜、あんたっホントに乳でかいなァ」
しか無かったが。
そうしてスイートマドンナまであと数メートルとなったとき、
「ふふふふ・・・」
周囲に奇妙な笑い声が響き渡った。
「な、なんだ!?」
笑い声に驚きあたりを見回すバーツとは対照的に、黄金バストはある一点を凝視していた。
すなわち、スイートマドンナ号の後部に搭載されている長距離砲を。
「バーツ、下がって!! そこにいるのは分かっているぞ、出てこい!!」
「ひゅ〜〜〜ほほほほほほほ。よく見抜いたな!」
長距離砲の砲身から、にゅろんっと出てきたのは・・
豊かなバスト、腰までとどく長い髪にゴーグル、胸に「D−CUP」のマークの入った衣装。
そして右手には服をひっぺがすための武器である鞭を握っている。
「天呼ぶ、地呼ぶ、人が呼ぶ。巨乳倒せと我を呼ぶ。巨乳ハンター見参!!!」
「現れたな、巨乳ハンター!! カモン、シャチ一号!」
シャチを呼ぶために黄金バストが指を鳴らした。
指の音に反応して、シャチが海面を跳ねた。そしてグラフに襲いかかろうと体勢を整える。
「ふふふ・・お前の手の内はお見通しだ!」
言うが早いか、巨乳ハンターが背中から何かを取り出し、高々と掲げた。
黄金バストは見た。バーツも、それを信じられない想いで見つめた。
左手には銀色に鈍く輝く穴の開いた小さなモノ、右手には3色に塗られたスイカ大の丸い物体。
ピ〜〜〜〜!!!!
甲高い音と共にその丸い物体はシャチに向かって投げつけられ、それをシャチは鼻先でキャッチした。
グラフが取り出したモノ。それはビーチボールとホイッスルであった。
(ホイッスルはともかく、ビーチボールがどうやって背中に隠せたのかなどというツッコミ禁止)
ピッピッピと小刻みに吹くホイッスルの音に合わせ、シャチは見事にビーチボールを操っていく。
シャチはグラフの笛の音とビーチボールによって、芸をこなすシャチ君に大変身をかましてしまったのだった。
「フフフ、いくら頭が良くても所詮は畜生。DNAに刷り込まれた本能には勝てまい!そ〜ら、取ってこい!!!」
グラフはもの凄い勢いでビーチボールを投げた。ボールは近くに待機していたピーチの手に渡り、まるでラグビーボールの様に次から次へとクルー達の間にパスが移っていく。
そしてシャチたちはそのボールに向かって泳いで行ってしまった。
「もどってこ〜〜〜〜い!!!!」
黄金バストの絶叫も虚しく、シャチは遙か彼方へと・・・・
「隙有り!!!!!!」
ビリビリビリッッッ!!!!!!
一瞬茫然とした黄金バストの隙を見逃がす巨乳ハンターではない。グラフは鞭を一閃させ、黄金バストの服をヒッぺがした。
トーン、トントン・・・・コロコロ・・
黄金バストの胸から2つの手鞠が転がり落ちた。
「ひょほほほほ、黄金バストの正体見たり!」
オルカはガクリと膝を折り、両手を地面につける。
潔く負けを認めたのか、オルカはマスクをはぎ、巨乳ハンターを見上げる。
「オルカ!?黄金バストはお前だったのか!?」
ホントに乳しか見ていなかったらしい。バーツの驚きはマジだった。
今頃知るなよ、バーツ・・・。
「俺の負けだ・・・・。煮るなり焼くなり好きにしろ」
「私は巨乳ハンター。巨乳以外に用はない!!!!ではサラバじゃ!!ひゅ〜〜ほほほほ」
どぴゅ〜〜ん
グラフはオルカを一瞥すると、高笑いを残して猛烈な勢いで走り去った。
「バーツ・・騙して悪かった・・俺はお前の彼女になりたくて・・」
正体のばれてしまったオルカはバーツの情に訴えようと、跪いたままの状態で項垂れ、力無く言い訳を始めた。
しかしバーツの返答はない。
不安に思いつつ顔を上げてみると、バーツは巨乳ハンターが走り去った方向をジッと見つめていた。
「おい、バーツ・・・?」
「巨乳ハンター・・・もの凄い乳だ・・・」
オルカの『ごめんね作戦』は巨乳好きなバーツの耳には全く届いていなかった(ご愁傷様・・)
そして戦いを遠くで見つめていた一つの影・・・
「巨乳ハンター・・・決着を付けねばなるまい」
(テンテケテンテケ・・<BGM)
巨乳ハンターに迫る最強最悪の巨乳!
巨乳ハンターは最後の巨乳を倒し、バーツを我が物と出来るのか!?
次回。「巨乳ハンターvsバストエンペラー」
乞うご期待!!!!(しないように)
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