「だから、私だ!!」
「私だよっ!!」
「俺だってば!!」
ここはキープグラバの、とある酒場。
先ほどから、男一人と女二人が大声で言い争っている。
「私は結婚の約束までしてたんだ!!」
「自分で蹴ったくせに!!私はガキのころから、アイツ一筋なんだ!!」
「俺だって、初めて会ったときから惚れてたんだ!!」
あまりの声のデカさに、周りにはかなりの人だかりが出来ている。だがそんなことはおかまいなしに、三人の男女――スパード、カマラ、グラフ――は口論を続けている。
どうやらバーツが誰のモノか、で、もめているらしい。
「ガキはすっこんでなっ!!」
「何だと!?私の方が胸はデカいんだ!!」
「ただデカけりゃいいってもんじゃないよっ!!」
「お、男の心情が解るのは、同じ男だけだゾ・・・」
普段は、スパードと争うことなど絶対しないグラフだが、バーツのこととなると話は別らしい。
スパードとカマラ、女二人の迫力に少々押されながらも、負けじと頑張っていたりするのだが・・・
ギロッ!!
『盆地胸は引っ込んでなっ!!』
スパードとカマラにいきなり睨みつけられ、ユニゾンで怒鳴られるグラフ。
二人の声に驚いたウェイターがお盆を落として、グラフの心情に合った、ナイスな効果音が酒場に響いた。
ガーン、てなもんで。
盆地胸呼ばわりされ、グラフはショックで石化した。
「もうすぐ、スイートマドンナが入港するらしい」
街の人々の声が、酒場に聞こえてくる。
「・・・ふんっ!!」
「負けるものか!!」
スパードとカマラは、それぞれ、バーツをモノにする準備をするため、野次馬を蹴散らして自分たちの船へと戻っていった。
二人が去って、十数分たったころ。
キャプテンを探しにきたピーチとストロベリーが目にしたのは、石化が解け、背後にふつふつと炎を燃やしたグラフの姿。
「ぅおのれ、スパード、カマラ・・・。ちょっと乳がでかいからって・・・。盆地胸の執念、見せてやる!
ピーチ!ストロベリー!ついてこい!!」
フルーツを従えて市場へ行くと、グラフは物凄い勢いで肉マンや布などを大量に買いこんでいく。
買物がすむと、そのまま船長室に閉じ篭って、何やら作り始めた。
時々ミシンの音に混じって、奇妙な笑い声が聞こえてくる。船長室の外では、フルーティズが大事なキャプテンが壊れたことにそっと涙していた。
スパードはレッドスケルのクルーを、カマラはジェイクとシドをしたがえて、バーツの元へと急いでいく。(ふられたら、バーツをフクロにするつもりらしい)
スイートマドンナ号が見えてきたと同時に、スパードとカマラも、バッタリ出くわしてしまった。
「おーや、お子様が何しにきたんだい?」
「そっちこそ、オバさんなんだから諦めたら?」
ずもももももぉ・・・と、お互いに背中から何かを出しつつ睨み合う、スパードとカマラ。
まさに一触即発な、その瞬間。
「ひゅーーーほほほほほほほっ」
突然、辺りに響き渡る怪しい声。
声の方向を探るべく、辺りを見回す海賊たちのまえに現れた、怪しい人物。
豊かなバスト、腰までとどく長い髪に、ほとんど黒に近い色のゴーグル、ツナギのような服の胸の部分には、「D−CUP」のマークが入っている。
そして右手には鞭、左手には壷と巻紙を持っていた。
「私は巨乳ハンター!!スパード、カマラ、お前たちのパイ拓を貰い受ける!!」
し―――ん。
あたりを沈黙が支配すると、
くるり。すたすた・・・
いきなり向きを変えて、スパードとカマラは肩を並べて歩き出した。
「いくよ、野郎ども!」
「最近暑かったからな、変なのが多くて」
「無視すんなぁぁぁ〜〜〜!!」
慌てて追いかけ、二人の前に周りこむ。
「ぢぇいっ!!!」
ビリビリビリッ
右手の鞭が一閃して、スパードとカマラの服がひっぺがされる。すかさず壷の中身(墨汁)を二人にぶち撒け、巻紙を二人の乳に押しつけた。
この間、わずか数秒。
二人はあまりの早技に、全く状況が掴めていない。
「キャプテンスパード!デビルカマラ!これから先、その乳で男をたらしこむことがあれば、このパイ拓を公開されると思え!!」
先ほどの紙には、二人の乳の跡がくっきりと浮かんでいた。
「では、さらばじゃ!!ひゅーほほほほ」
どぴゅーーん
高笑いを残して、猛烈なスピードで走り去る。
「待ちやがれ!この野郎!!」
「カマラ、乳!乳しまえ〜〜!!」
乳をほり出したまま、後を追いかけるカマラ。ジェイクとシドが、布切れ片手にカマラを追いかけていく。
スパードの方は、暫し呆然と立ちつくす。彼女が我に返ったあと、思わぬ目の保養をしてしまったレッドスケルのクルーたちには、鉄拳制裁が待っていた。(可哀想に・・・)
場所は変わって、クロウバード号の船長室。
「キャプテン、何食べてるんスか?」
「ん〜?肉マン。お前らも食べるか?人肌だけど」
「あ、いただくっス」
もくもくと、肉マンを仲良く食べる三人。
「キャプテン、ご機嫌っスね」
「うん♪良いことがあったから♪」
「良いことって・・・キャプテンスパードとデビルカマラが、バーツを諦めたってことですか?」
「うん!」
すっごく嬉しそうな笑顔で、ピーチの質問に答えるグラフ。
D−CUPマーク入りの服が掛けてあるのを見つけると、二人は手元の肉マンをじっとみつめる。
「ひょっとしてこの肉マン・・・、胸に詰めてたやつっスか?」
「そォだよ♪」
ピーチとストロベリーは、今回の騒動が自分たちのキャプテンが引き起こしたことだと知って、思わず天井を仰ぎ見た。
「キャプテン・・・そんなに、バーツのことが好きだったんスか・・・」
「そーいえば、スイートマドンナのクルーもバーツを狙ってるって噂、聞きましたよ?」
「バカ!!」
ピーチは、ストロベリーの口を慌てて塞ぐが、時すでに遅し。
グラフは青筋を立てて、背中に炎を燃やしている。
「ふっふっふっ・・・。まだライバルがいるか!!」
しかし、スイートマドンナのクルー達に、乳はない!!
どうする、キャプテングラフ!
どうする、巨乳ハンター!!
グラフは、無事にバーツをモノにできるのか!!??
(それは誰にもわからない・・・・)
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