注意:この作品は「銀河鉄道999」と「さよなら銀河鉄道999」、
「ヤマトよ永遠に」を見ないとキャラが分かりません。
 キャラが分からないと言う方は、諦めてビデオを借りて下さい。
不親切なキャラ解説は→こちら


始まりは、ロザーナの何気ない一言だった。
「ねえ、ドルファン。建国祭で面白い案ない?」

 翌日。
 ラアージノヴの建国ン百年を一ヵ月後に控え、国中に御触れがでた。
 それには




一ヶ月後の建国祭に演劇大会を開催する。 
参加を希望する者は、
所定の期日までに申し込みを行うこと。  
      
尚、優勝チームには望みの褒美を与える
  
 
と書かれていた。
 中立港キープグラバに張り出された御触書の前にも、大勢の人が集まっていた。
 その中に我らがヒーロー(?)、キャプテンバーツの姿もあった。
 バーツは拳を握り全身をワナワナと震わせると、御触書の下に置いてあった案内書をひっ掴み、猛烈な勢いで港の方角へと走り去っていった。

 港の側の酒場では、バーツに呼び出されたキャプテンスパード、キャプテングラフ、デビルカマラの3人がそれぞれ主だったクルーを引き連れて、あまり和やかとは言えない雰囲気の中、一つのテーブルで酒を飲みながらバーツを待っていた。
 白無の頭ラグ・ローグも同じテーブルで3人と一緒に飲んでいる。
 少し離れたテーブルでは、スイートマドンナのクルー達(なぜかチャコもいる)もバーツの帰りを待っていた。
 呼び出されてかなりの時間がたちメンバーが苛立ち始めた頃、なんやかやと荷物を抱えたピートを引き連れてバーツが入ってきた。
「遅いゾっ!!」
「女を待たせるなんて最低だね」
「悪ィ、悪ィ、ちょっと用意に手間取っちまってよ」
「用意?」
「そう!みんなを呼びだしたのは他でもねェ。折角の建国祭、合同で何かやらないか!?」
 バーツは持ち帰った案内書をたたきつけるようにテーブルの上に開き、みんなに見せた。
「演劇大会……?」
「いきなり呼び出して、なんの用かと思ったら……」
「やってもいいが、演目は何をする気だ?」
「しょーもないラブロマンスなんかさせる気じゃないだろうね」
 一人燃えているバーツとは対照的に冷ややかな眼差しのローグとスパード、カマラの3人。
 グラフはバーツの話にかなり乗り気になっているのか、ワクワクとした表情で身を乗り出している。
「ふっふっふ‥‥聞いて驚くなよ」
 バーツは勿体を付けるかのようにゆっくりとみんなの顔を見回し、一旦口を噤んだ。
 そして大きく息を吸い、
「題材は、『銀河鉄道999(劇場版)』及び『さよなら銀河鉄道999』だっっ!!!!!!!!!!!!」
 目一杯力強く宣言した。
「ちょっと待て。何でいきなり999なんだ?」
 スパードが自分の世界に浸っているバーツに水を差した。
「イヤ〜、この間リバイバル上映しててよォ。懐かしくなっちまって」
「だからといって999は古すぎないか?」
「何を言うんだ、ラグ!! 徹夜で並んでまで見に行った事を忘れたのか?
松本零士作品は俺達の少年時代の思い出じゃないか!!!!!(どど〜〜ん)」
 バックに津波を背負い、力説するジョン・バーツ。彼はものの見事に松本世代の人間だった。
「文句はないな!!??」
 訳の分からない迫力に押され、集まったキャプテン達はただ頷くことしか出来なかった。

 バーツは用意していた『銀河鉄道999』と『さよなら銀河鉄道999』のシナリオを皆に配った。
「キャストを決めていこう」
「は〜い、はいはい!! 俺、キャプテンハーロックやる!!!!!!」
 すかさず子供のように手を挙げて、グラフは嬉しそうに名乗りを上げた。
「お前みたいなヤツがハーロックかい?」
「ええ〜?グラフがハーロック?」
 スパードがジロリと睨み、カフェルも不満を口にする。
「何が悪いんだよ!!?? 眼帯してるし、男らしいし、髪型だって似てるし……。まさしく俺そのものじゃないか!!」
 ハーロック役を否定されて、グラフはプゥと膨れる。ハッキリ言って、20代後半の男のするような仕草ではない。
 しかし子供じみたその動作が似合ってしまうのだから、余計手に負えない。
「外見はともかく、内面は先代の方が似ていると……」
 傍らにいたストロベリーが、こっそり呟いた。
「とりあえずグラフがハーロックをやるとして、クイーンエメラルダスは誰だ?」
 バーツの言葉に、ザッと視線が後方の一点に集中した。
 皆が一斉に見つめた先には、椅子に座ったデッドが興味無さ気に酒を飲んでいた。
 皆の視線に気付き、
「……赤どくろなら、俺よりスパードの方が適任だろう‥‥?」
 言葉を選びながらではあるが、全身で断りのオーラを醸し出していた。
 説得しようとバーツが口を開き掛けた瞬間、
「何をいうんでちゅかっ!!!」
 聞いたことのある赤ちゃん言葉が、どこからともなく酒場に響き渡った。声の発生場所を探るため、メンバーが酒場のあちこちを見渡した。しかし、何処にも声の主の姿はない。
「何処を見ているでちゅか。ここにいるでちゅ」
 再び声が響き、その方向を全員が見た。
 デッドの脇に置かれていた高さ30cm、直径20cmほどのくずかごから、ザギが顔を出していた。
「うわっっ!!」
「ザギ!? どっから出てきてんだ!!??」
 ザギはよっこらしょ、と身体をくずかごから引き抜いていく。一体この小さなくずかごにどうやって入っていたのか……まさしくマジシャン。
「デッドのいるところに、いつもいるでちゅ。それより! エメラルダスはデッドじゃないとだめでちゅ!
ストレートの長い髪、顔にサンマ傷、これこそエメラルダスに必要なものでちゅっっ!!!!!」
「サンマ傷と呼ぶには、俺の傷はでかいが」
「いいんでちゅっ!!!!」
「それに、エメラルダスの衣装は俺にはサイズが合わないゾ」
「心配は無用でちゅ」
 何とかエメラルダス役を免れようと色々と言い訳をしていくデッドに向かって、ザギは一本立てた指をチッチッチと左右に振った。
 そして自らが出てきたゴミ箱に手を入れ、中からトランクを引っぱり出した。
「よ…四次元ポケット……」
 唖然とするバーツ達を後目に、ザギは引っぱり出したトランクを開けた。
「こんな事もあろうかと思って、エメラルダスの衣装をつくってきたでちゅ。
さっ、デッドはこれを着るといいでちゅよ。これはデッドの体型ぴったりに作ってあるでちゅ」
 中からエメラルダスの衣装をだし、それをデッドの身体に宛った。
「いつ採寸したんだ?」
「デッドが寝ているときに、こっそり忍び込んで採寸したでちゅ」
「……斬る」
「まあま、押さえて押さえて」
 愛用の剣を振り上げ今にもザギに斬りかかりそうなデッドを、バクチが後ろから羽交い締めにして止めた。
「衣装も用意されてるンなら、もうデッドで決定だな!みんな異存はないか?」
 誰からも不満は上がらなかった。
 突然現れたザギの強いプッシュによって、デッド=エメラルダス決定。
「それから‥‥ココは鉄郎。999の車掌は、身長でいけばノーズだな。
役の決まったヤツはピートから衣装を受け取っていってくれ」
 建国祭には国王として出席するピートは、劇に参加はしない。その代わり、裏方としての仕事の一切をバーツに任されていた。
 グラフやココ、ノーズが衣装を受け取りにピートの元へと向かっていく。
「俺は?」「あたし達は?」
 それを横目で見ながらこっそりと手をあげ自己主張する、カフェル、チャコ、ミルカのお子さま軍団。
「そっだなぁ…カフェルは鉄郎の親友の、ミヤゥダー。肌の色も違うし‥‥丁度いいだろ」
「ええ〜〜??ミヤゥダーって、『さよなら999』の方しか出てないじゃん……」
「文句いうな!『999』と『さよなら999』、両方出ているヤツの方が少ないんだぞ!!
チャコとミルカは‥‥999のウエイトレスの、クレアとメタルメナ。2人とも鉄郎に好意を持ってたし、ぴったりだろォ?
どっちがどっちするかは話し合いで決めてくれ」
「「は〜い」」
 カフェルの不満を一喝の元に押さえ込んだバーツは、キャラクター設定集を片手にドンドンと役を割り振っていく。
「バーツ、黒騎士は?」
「順当に行けばラグなんだが」
「俺は人に使われる役はまっぴらだ。女王プロメシュームをやらせてもらおう」
 ココに問われ、バーツがローグの方を向いてみると、ローグは早々とプロメシュームの衣装を着込んでいた。
「さすがだな、ラグ……」
「じゃあ、誰が黒騎士するの?」
「俺がやるよ」
 バクチが手を挙げ、立候補した。
「黒騎士は仮面被ってるから、あんまり顔が出ねェゾ。それでもいいのか?」
「ハーロックの旧友なんでしょ?おまけにラストの方じゃ一緒に酒を酌み交わしてるし。
こんな美味しい役を逃す手はありませんよ」
「なんか引っかかる物言いだな、バクチ」
「そうですか? きっとキャプテンの気のせいですよ」
 突っかかってきたバーツを得意のポーカ−フェイスで躱し、ハーロックの衣装を着て喜んでいるグラフの方をちらりと見て、バクチは衣装を受け取りに行くため立ち上がった。
 ハーロックに関係する役をやって、少しでもグラフに自分を印象づけようと言う作戦らしい。
「言っておくが、グラフは俺のモンだからな。手を出すんじゃねェゾ」
「まだ何もできてないんでしょう? だったら、グラフはあなたの『もの』じゃないハズですよ」
 痛い所をつかれ、バーツのこめかみに青筋が浮かぶ。
 バーツがグラフに一目惚れして早10数年。しかし、未だグラフに告白すら出来ずにいた。グラフのことになるといつものクレイジーさもなりを潜めるらしい。
 2人はバチバチと火花を散らしてにらみ合う。
「‥‥バクチ、後できっちり話つけるゾ。次、ハーロックの親友のトチローを……」
「はいっ!」「はい!」
 2本の手が勢いよく上がった。
 手の主はザギと白無の副長、クラウド・ファングであった。
 キッとお互いを睨み付ける。
「なんでちゅか、お前は」
「デッドファンクラブ会長としては、この役目は絶対にゆずれん!」
「私設ファンクラブでしかない2流の殺し屋がえらそうなことぬかちてるんじゃないでちゅ。俺は公認ファンクラブの会長でちゅよ。
従ってエメラルダスが身も心も、命すら捧げた恋人の座は俺のものでちゅ!」
「俺は公認などした覚えはないゾ」
「俺が自分で公認ちまちた」
「…………」
 デッドが静かにツッコミを入れるが、ザギは悪びれることなく胸を張って堂々と言ってのけた。
「2人ともトチローってカンジじゃないよォ。ザギって、トチローよりも『宇宙戦艦ヤマト』の真田さんの方が似合うと思うけどなァ」
「あっ、ぴったり、ぴったり!!」
 少し離れたところで鉄郎の衣装に着替えていたココがポツリと呟いた。
 ピートから衣装を受け取るために並んでいたカフェルやチャコも、その意見に同調する。
「このナイスガイの何処が真田でちゅか!!」
「だって…眉毛ないし…何でも知ってるし‥‥」
「何か困ったことがあったら、《こんなこともあろうかと思ってな》とか言って、解決策もって来そうな感じするよね〜」
「じゃあ、デッドはサーシャをするでちゅ♪ 赤ん坊から17歳になるまでの一年間、じっくりと面倒を見て上げるでちゅ♪」
「断る」
「バクチは島大介で、ピートは恋人を残して来ているから相原、ノーズは佐渡先生、アリスは猫のミーくん……」
「はいそこっ! 十代のヤツに分からないようなディープな会話を勝手にしない!!」
 放っておけばどんどん『宇宙戦艦ヤマト』でキャスティングしていきそうなお子さま軍団をビシッと指さし、バーツはヤマトな話題に釘を刺した。
「っていうかさぁ、999自体が十代の人間には分かんないと思うけど?」
 ココから至極まともな突っ込みが入った。
「エメラルダスをやるデッドとしては、トチローは誰がいいと思う?」
 ココの突っ込みを見事に黙殺し、バーツはデッドに話を振った。
「背が低くて男気に溢れているのだから、ミガルだろう」
「じゃ、トチローはミガルで決定だな」
「デッド〜〜!!俺達の愛は何処に行ってしまったでちゅか!!??」
「そんなもの、最初から存在してねェよ」
 落ち込むザギにすかさず突っ込むクラウド君。
「ふっふっふっ‥‥キミとは此処でケリを付けた方が良さそうでちゅね。表に出なちゃい」
「望むところだ。貴様を倒して、唯一のデッドファンクラブになってやる!!」
 狭い酒場の中で争えば愛しのデッドを巻き込んでしまう可能性が有ることを配慮して、2人は剣を持ち表へと出ていった。
 暫くして、ボロ雑巾の様になって飛んでいくクラウドが通りに面した窓から見えた。 
「モテモテだな、デッド……」 
 2人の争いを茫然と見ていたメンバー達だが、バーツのその一言で我に返った。再び劇の話へと戻る。
「あたしは誰をすればいい?」
「カマラは、イリューズ。酒場で踊るのも弾き語りするのも、似たような物だろ?」
「無茶苦茶だね」
「イリューズが嫌なら、冥王星の氷の墓場の管理人シャドウでも……」
「……イリューズでいい」
「ハルクはぶどう谷の山賊アンタレス、スパードは鉄郎の母親を頼む。よっし!これで全員の役一応決まったな!!??
あとの端役は随時決めていくと言うことでいいな!?」
「ちょっとまった〜〜!!!!」
 バタン!ともの凄い音を立てて酒場のドアが開き、額にスカーフを巻いた男が飛び込んできた。
 男の名はナッツ。
 ダイアンを殺し、ダイアモンドサーペントを乗っ取ったちんぴら君(バーツ談)である。
「こんな一大イベントに、ダイアモンド・サーペントだけ声を掛けないとは一体どういう了見だ!!??」
 ぜーぜーと息を切らせつつ、ナッツはバーツに詰め寄った。
「あれ、誰だ?」
「ダイアモンドサーペントの現キャプテンですよ」
「ああ、そう言えば!」
 ナッツと全く面識のないグラフには、突然入ってきたスカーフ男の正体が判らない。キャプテンハーロックの副長、ヤッタランの衣装に着替えたストロベリーが彼に囁き、グラフは以前耳に入れていた情報を思い出した。
「あいつ、確か・・落花生って名前だったよな」
「ちがうわぁ!!!!!!!!」
 しかし人の名前を覚えないことには定評のあるグラフ、ナッツの名前を見事に間違えていた。
 落花生呼ばわりされ、ナッツは星一徹よろしく酒場のテーブルをひっくり返した。
「え〜〜? 賭博ぅ、こいつの名前、落花生じゃなかった?」
「そうそう、落花生、落花生」
 グラフは同意を求めるように、一番近くにいたバクチを見た。
 グラフに嫌われては元も子もないので、バクチはナッツの名前を訂正しようとはしなかった。
「マックス! 貴様、親友を助けようとは思わんのか!?」
「悪いな、落花生。グラフ、俺は賭博じゃなくてバクチだ」
 恋の前では古い友情など儚いもの。バクチは顔を引きつらせて怒鳴るナッツに背を向けた。
 そして今がチャンスとばかりに、グラフの手を握り自己アピールを開始する。
「賭博、マックスって言うのか?」
 握られた手を振り解きもせず、にこにこと微笑みながらグラフはバクチの本名を呼んだ。
「グラフ……」
「そこまでだ」
 無邪気な顔で本名を呼ばれ、感極まったバクチが思わずグラフを抱き締めようとした。しかし、バーツが殺気を漲らせてバクチの首に剣をあて、それを阻止する。バーツはグラフの手を掴んで自分の方へと引き寄せた。
「いいか、グラフ。こいつはケダモノだから、迂闊に近寄ると危ないぞ」
「危ないって‥‥どういう風にだよ?」
 グラフの両肩に手を置き、真剣な顔で彼を諭す。だがニブイグラフには言葉の意味が解らない。キョトンとした顔でバーツを見つめ返した。
 いくら尊敬するキャプテンとはいえ、チャンスを邪魔され、ケダモノ呼ばわりされて黙っているほどバクチも人は良くない。
「ケダモノはキャプテンでしょう!? クロウバード号と同じ港に入る度、グラフに夜這いを掛ける計画を立ててるのを俺が知らないとでも思ってるんスか!?」
「だァァァ!! ばらすんじゃねェ!!!」
「貴様ら、俺を無視するなぁ!!!!」
 完全に無視され、ナッツは足を踏みならして怒りまくる。
「あ〜、はいはい。じゃあお前は機械伯爵に決定。これでメインキャラは全員決まったな」
 顔をタコのように真っ赤にしているナッツを軽くあしらい、バーツはキャスティング表を閉じた。
「何故俺が機械伯爵なんだ!!」
「文句があるなら出なくていいゾ。どうせお前は呼んでねェんだから」
 なおも文句を言い続けるナッツに、バーツはとどめの一言を放った。
「ぐっ……。分かった、機械伯爵で手を打ってやる…‥」
 ツッパっているのも、全ては寂しさの裏返し。寂しがり屋のナッツとしては、自分一人がのけ者と言うのが耐えられないのだ。
 役柄に不満があろうとも、その役を受けるしか道はなかった。
「ねェバーツ、肝心のメーテルがまだ決まってないよ?」
 バーツの背中に向かって、ココが声を掛けた。
「あっ、メーテルは俺がやるから」
 バーツはさらりと言ってのけた。
「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!????????」
 その場にいた全員から驚きの声があがった。
「じゃあ僕、バーツとキスシーンするのぉ!!??」
 ココが目一杯イヤそうな顔をした。
「んーだよ。俺とキスするのイヤか?」
「イヤだよ!! だって僕、ファーストキスもまだなのに!! ファーストキスの相手がバーツなんてイヤすぎるよ!!!」
「じゃ、今ここでファーストキス済ましちまえ。チャコとミルカちゃん、どっちがいいんだ?」
 バーツがココの耳元でそっと囁いた。
「そ、そんなの出来るわけないじゃないっ………!!」
 真っ赤になり、慌てて周りを見回したココの視界に、衣装あわせの順番を待っているカフェルの姿が目に入った。
「そうだっ! 鉄郎のお母さん役がスパードなんだから、鉄郎役はカフェルに譲るよ!!!」
「冗談じゃない、俺だってイヤだよ!! ねェ、母さん!?」
「バーツと瓜二つの役なんてまっぴらだ。私は地獄の聖母(ヘル・マザリア)がやりたいね」
「あっ、似合う、似合う!」
 パチパチと拍手をするミルカとチャコ。
「母さん、ヘル・マザリアは『エターナル・ファンタジー』だよ?」
「『エターナル・ファンタジー』も含めれば、文句はないだろォ?」
「よっし、この際だ!『エターナルファンタジー』もやっちまおう!!」
「キャプテン……」
 先ほどから案内書に書かれてある注意書きの小さな字を隅から隅まで読んでいたピートが、控えめにバーツの肩を叩いた。
「ンだよ?」
 盛り上がっている気分に水を差され、バーツは少し不機嫌気味に振り向いた。
「劇の長さの時間が決められてますよ?」
「何処に?」
「ほら、ここ」
 ピートが指さした箇所には小さく注意書きがしてあった。
 そこにはしっかりと
  【一組10分以内に収めること。時間オーバーの場合は失格とする】
 と書かれてあった。
「気にするな。時の流れにさえ縛られない、それが海賊だ!!」
「あ〜〜!! それ、俺の親父のセリフだぞ!!」
「いいじゃねェか。お前の親父は俺にとっても親父になるんだし♪」
「なんでそうなるんだよォ?」 
 相変わらずニブニブなグラフの返答に、バーツの目が妖しく光った。
「知りたいか? 教えてやるから部屋に行こうぜ♪」
 グラフの肩を抱いて、酒場の奥へと連れ込もうとしたとき、
「させるかぁ!!!!」
「ぐはッ!!!」
 バクチの跳び蹴りがバーツの背中に炸裂した。
 不意打ちを食らいバランスを崩したバーツ、まるでボウリングの玉のように顔面で酒場の隅まで滑って行く。隅に置いてあった空き瓶の山に突っ込み、瓶を全て薙ぎ倒して漸く止まった。
「イイ度胸じゃねェか……。丁度いい、グラフが誰のものか、ハッキリと思い知らせてやる‥‥」
 鼻血を垂らし、背中にくっきりと靴跡をつけたバーツが、崩れ落ちた瓶の山の中からまるで大魔人の様な形相で起きあがった。
 バクチの方に向き直ると腰に差した双剣に手を掛けた。
 剣を持たせたらバーツに敵う者などいるはずもない。バクチは何とか自分に有利な展開に持っていこうと、間合いを取りつつ思案を巡らせていく。
「双剣は卑怯ですよ! まずいことがあればすぐに実力行使って態度は、止めた方がいんじゃないっすか!?」
「っるっせェ! 海賊が実力行使して何が悪い!!」
 しかし頭に血が上ったバーツにバクチの口車など通用しない。
 バーツが双剣を抜き払い、バクチとの間合いを大きく詰めた瞬間!
「お前らさっきから何でケンカしてんだよォ?」
 ……一触即発の雰囲気はグラフのボケボケ発言で四散してしまった。

 
 バーツとバクチ、ザギとクラウドの2組みの争いを一部始終見ていたミルカが、ココに向かってポツリと呟いた。
「ねェ、ココ‥‥。こんなチームワークでホントに劇なんてできるのかな……?」
「さあ………」 






海流の休憩所一周年祝いに捧げた物です。
999を知らない人をほったらかしで突っ走っています(笑)
21巻でココを止めるグラフの雰囲気があまりにも
ハーロックに似てたので、他にも似合うキャラが居るのでは!?
と思ったことが全ての始まりでした(笑)
オールキャラといいつつオルカがいないのは、
忘れていた ぴったり合うキャラが居なかったから(苦笑)
    キャスティングが楽しくて書いた一品です